難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を知ってもらうために。

身体が動かなくなっていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を46歳で発症した夫を通して学んだこと。

ALS(筋委縮性側索硬化症)において筋肉の状態とは。

ALS(筋委縮性側索硬化症)は身体中の筋肉が痩せて、次第に動かなくなっていく病気です。上肢、下肢、喉、舌の筋肉だけでなく、呼吸を司る筋肉まで動かなくなってしまうため、ALS患者は人工呼吸器よる延命が必要になります。

 では、ALS(筋委縮性側索硬化症)は筋肉の病気なのでしょうか?

 

[なぜ、筋肉が動かなくなるのか?]

 まず、ALS(筋委縮性側索硬化症)は筋肉の病気ではありません。運動神経の病気です。

 ALS(筋委縮性側索硬化症)が発症すると、身体を動かす神経系が変性していきます。

人が「手を動かしたい」と思うと、脳の運動神経細胞(上位ニューロン)が伝達の役目を果たします。

 上位ニューロンは「手を動かしたい」という指令を下位ニューロンに伝達します。

下位ニューロンはこの命令を手の筋肉に伝えます。

 ALS(筋委縮性側索硬化症)では、この上位ニューロンと下位ニューロンの両方の運動神経細胞が障害されるます。上位・下位ニューロンが共に壊れていくことで、結果的に筋肉が動かなくなるのです。

 なので、ALS(筋委縮性側索硬化症)は筋肉自体に病変があるわけではありません。

筋肉自体は健常なのですが、運動しようとする命令を伝える運動ニューロンの病気なのです。

 

[ALS(筋委縮性側索硬化症)において筋肉はどのように変性していくのか?]

 ALS(筋委縮性側索硬化症)は運動神経の病気なので、筋肉自体には問題がありません。

筋肉に命令を伝える運動ニューロンが障害されると、その運動神経細胞の伝達で動くはずだった筋繊維は動かすことができなくなり、細くなってしまいます。

運動ニューロンが伝える先の筋繊維はグループとなって「動かす」という命令を受けています。運動ニューロンが障害されると、筋繊維がグループ(束)で痩せてしまいます。

今まで100パーセントの筋繊維で腕を動かし、物を持ち上げていましたが、ALS(筋委縮性側索硬化症)が発症し、筋肉が痩せていくと、動かなくなった筋繊維を除く80パーセントの筋繊維のみで腕を動かさなくてなならなくなります。

 しかも、障害された運動ニューロンと同じ場所へ「動かせ」という命令を伝達する運動ニューロンが障害されていきます。

 なので、一度腕の筋力が低下し始めたら、動く筋繊維は80パーセントから50パーセントへ。そして30パーセント、10パーセントと、徐々に減っていってしまうのです。

 結果として、例えば右腕から発症した場合、右腕が動かしにくいところから始まり、そして腕を上げることができなくなり、ついには右腕を動かすことができなくなってしまうのです。

 

[運動ニューロンの障害の典型的なパターンとは]

 

ALS(筋委縮性側索硬化症)は患者個人によって進行のスピードも、症状の出方も異なると言われています。

その中でも、典型的な進行のパターンだあります。

 

まず、どちらかの足から始まることが多いようです。

歩きにくい、足がつる、疲れやすいなどの自覚症状が現れます。

そして同じような症状が反対の足にも現れてきます。

 手から始まるパターンも同様に、一方の手が開きにくい、指が動かしにくいなどの症状が現れ、腕が上がらなくなっていきます。

 そして、反対の手にも広がって行きます。

 

手足から始まる症状の特徴として、身体から遠い指から筋肉が痩せていくようです。

指先が動かしにくくなり、手足を高く上げることができなくなります。そして手足全体が動かなくなります。

 

手足に症状を感じた後、飲み込みにくいと感じるようになります。

これは、喉た舌の筋肉が痩せてくるからです。

次第に口腔内の筋力低下から、呼吸筋も低下していきます。

発症から2年から5年で身体中の筋肉が動かなくなっていきます。

 

[ALS(筋委縮性側索硬化症)において、障害されにくい筋肉もあるのか?]

 発症から2年から5年かけて、身体中の筋肉が動かなくなっていきますが、中には障害されにくい筋肉もあります。

 ・ 目

表情を作る表情筋も進行の後半には動かなくなってしまいますが、眼球を動かす筋肉は最終的にある程度残ることが多いようです。

 そのため、眼球の動きを利用して意思伝達装置を動かすことができます。

しかし、瞼を開けたり閉じたりする筋肉まで動かなくなってしまうと、眼球の動きを読み取ることができなくなってしまいます。

 

 ・括約筋(尿道や肛門を締める筋肉)

 肛門をきゅっと締める筋肉を括約筋といいます。ALS(筋委縮性側索硬化症)ではこの括約筋は障害されにくいようです。

そのため、無意識に排便してしまう、不意な尿漏れなどは起きにくいようです。

 

・知覚障害、感覚障害

 ALS(筋委縮性側索硬化症)では身体中の筋肉が動かなくなることによって、しゃべりにくくなります。

また、呼吸筋の衰えにより、人工呼吸器を装着した場合、言葉を発することができなくなります。

 コミュニケーションが取りにくくなりますが、知覚障害・感覚障害はありません。

すなわち、話ができなくても、周りの人が話していること、自分の置かれている状況はしっかり理解しています。思考は健全なのです。

 また、皮膚を触られた感覚や、かゆみ、痛みなどもしっかり感じています。

 

[まとめ]

 ALS(筋委縮性側索硬化症)は筋肉は健全ですが、筋肉に「動く」という命令を伝える運動ニューロンが障害され、結果として筋肉が動かなくなってしまう神経の病気です。

 病気の進行は身体から遠い部位(手や足の指先)から始まり、2年から5年かけて呼吸筋を含む身体中の筋肉が動かなくなってしまいます。

 比較的、最後まで動く部位は眼球と括約筋(肛門や尿道を締める筋肉)です。

また、知覚障害、感覚障害は無いので、思考や皮膚感覚ははっきりとしています。