難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を知ってもらうために。

身体が動かなくなっていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を46歳で発症した夫を通して学んだこと。

ALS(筋委縮性側索硬化症)の闘病はなぜつらいと思ってしまうのか?

【ALSの闘病は他の病気の闘病とは違う】

ALS(筋委縮性側索硬化症)の闘病はガンなどの病気の闘病とはすこし異なってきます。

 「闘病」という言葉を聞いてイメージされるのは、点滴や手術など治療をしながら入院し、回復したら退院するということだと思います。

 ALSでは一部を除き、入院しての治療はありません。(診断、ラジカット治療、呼吸補助装置を使用する、レスパイト目的などの入院はあります。)

 多くのALS患者は自宅で日常生活を送りながら闘病を続けています。

ALSには、「確固たる治療法」がないからです。

 ALSは進行とともに身体が動かなくなっていく病気です。「話す」という動作も病気によって奪われてしまします。

 闘病しながら続けるALS患者の日常生活には「介護」が必要となり、「患者の意思伝達の課題」が伴うのです。

 「ALS患者の闘病とは入院生活ではなく、日常生活を送るということであり、すなわち介護される」というところに他の病気の闘病とは異なるところなのです。

【ALSの主な治療法は?】

ALSの主な治療薬は2種類あります。

一つはリルテック錠(リルゾール)。

リルテックはグルタミン酸伝達を抑制する働きがあります。

ALSの発症原因の一つの可能性として、グルタミン酸が過剰になり、神経細胞が破壊されるのではないかという説があります。

 リルテックはそのグルタミン酸を抑制し、神経細胞を保護する働きがあります。

服用することにより、生存期間を2~3か月延長する延命効果があるとされています。

 

 もう一つの薬はラジカット(エダラボン)です。

 こちらは点滴静注を一日1回行います。投薬期間と休薬期間を合わせて28日間を1クールとします。投薬期間(14日間)の間に10日間点滴し、その後14日間を休薬期間となります。

 ALSにはフリーラジカルによる酸化ストレスが関与している可能性があり、そのフリーラジカルを消去することでALSの進行を抑える働きが期待されています。

 

 ALS(筋委縮性側索硬化症)の治療薬には上記の2種類しかなく、どちらも病気を治す治療薬ではありません。ALSの進行を遅らせる効果があるが、服用していても着実に病気は進行し、少しずつ身体は動かなくなっていくのです。

 ALSの進行は早く、人工呼吸器による延命をしなければ、平均余命が2~5年とされています。新たな薬の開発や治験は始まっていますが、まだ実用化はされず、ALSの回復や完治までには遠い道のりです。

 

 【ALSの進行は不安と絶望を感じるが、介助と工夫で乗り越えていく】

 ALSが発症すると、重いものが持てなくなる、歩きづらくなる、話しにくいという初期症状から始まります。発症から1年も経過すると、次第に箸を使うことが出来なくなり、スプーンやフォークに持ち替えます。

 このように「●●ができない。でも△△を使えばできる」という工夫をしながら日常生活を過ごしていきます。

 しかし、スプーンを持ったとしても、口までスプーンを持ち上げることができなくなってしまいます。

 「食べ物を噛んで呑み込む」という無意識にでも行っていた動作。

これも舌や口腔の筋力低下により、舌が動かしにくくなるので、食べ物を口の中で動かすことができなくなります。噛むだけでも疲れ、食事にも時間がかかるようになるのです。 

 自力で食事が出来なくなると、刻み食になり、家族にご飯を食べさせてもらうという「介護」が始まります。

 このような筋力低下による変化が足にも、腕にも、のどにも、身体全身に渡っておきてくるのです。

  昨日は一人で入れた浴槽が、今日は介助されないと湯船につかれない。

朝は歯磨きが出来たのに、夜になったら手が疲れて歯ブラシを動かし続けられない。

 ALS患者は「出来ない、動かない」を感じるたびに、「ALSの進行」を身体で感じ、「これから自分の身体はどうなっていくのだろう」という不安と絶望を味わうのです。

 根本的な治療薬のないALSは在宅で、動かない身体の一部を動ける部分で補いながら、また、道具や動かし方を工夫し、ときには介護されながら日常生活を送り続けているのです。

 

【在宅での闘病だからこそ、生きる喜びを感じられる】

 患者自身の身体や介護の負担の大きさや進行のスピードの速さなどから、患者も家族も辛さを感じてしまうのがALSの闘病です。

 半面、在宅での闘病だからこそ、家族の一員として家庭で過ごすことができます。

介護体制と患者本人の体調さえ整えば旅行にも行けます。

 身体の状態を考慮しながら収入を得ているALS患者もいます。

 家族や友人との触れ合い、外出、食事、会話、入浴・・・普通に日常生活を送れる私たちにとっては当たり前なことひとつひとつがALS患者にとって、生きる喜びとなります。

 負担も大きく、時には心が折れそうになるALSの闘病生活も、家族や友人の支えがあれば乗り越えられるものと信じたいと思います。