難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を知ってもらうために。

身体が動かなくなっていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を46歳で発症した夫を通して学んだこと。

ALS患者の家族負担はその発症する年齢によってかなり変わってくる。

今日は難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の発症年齢による患者家族の負担の違いについて考えてみます。

【ALS(筋萎縮性側索硬化症)とはどのような病気か】

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)は60代から70代の高齢者世代の男性に好発される病気です。しかし、なかには女性で発症する方や、40代、さらに若く20代で発症する方もなかにはいます。

 ALSは脳から体を動かすために分泌される運動ニューロンが変性してしまうため、身体が徐々に動かなくなっていく運動ニューロン疾患です。

 治療のための特効薬、治療法はまだなく、難病指定されています。唯一の治療法が、進行を遅らせる効果のある薬、2種類です。

 ALSを発症し、次第に身体が動かなかくなっていくなかでも、患者は在宅で日常生活を送っている場合が多いです。そのため、家族に掛かる介護負担がほかの病気に対して大きくなるのです。

【発症数の多い60代以降の高齢者世代での発症の場合】

 好発とされている60代以降の男性の場合、子育てもひと段落し、「さぁこれからゆっくり好きなことをやれる時期が来た」という頃でしょう。

そんなときに身体の自由が奪われていく病気がALS(筋萎縮性側索硬化症)です。

主介護者となるであろう、配偶者の年齢も60代以降と考えると、介護の負担は身体的に大きくなるとおもいます。

 しかし、子どもが成人し、介護を手伝うことができる状況であるならがば、マンパワーが増え、介護者も患者本人にとっても精神的、身体的に負担が軽減されるとおもいます。

 また、子どもが成人していれば、子どもにかかる費用が少なく、介護に掛かる金銭的不安も減少しするのではと思います。

 また、利用できる社会的サービスも、障碍者福祉サービス、介護保険制度によるサービス高齢者医療保険制度など複数あります。

 通院にかかる医療費も1割負担、介護保険制度でのサービス利用の自己負担も1割と様々な社会的サービスが利用しやすい体制が整っています。

 しかし、それでも身体介護の多くなるALSは高齢世帯での介護負担は大きく、成人した子供が介護を手伝う場合でもその子供の家庭の状況もあり、容易ではないことでしょう。

 【発症数の少ない20代30代でのALS発症の場合】

 逆に、少数とされる20代、30代での発症の場合、一番に懸念されるのが患者本人の精神的な負担です。

 これから社会に出よう、家族を築いていこうと夢や希望に溢れ、活力ある世代での発症。患者本人の「なぜ?今?自分が?」という答えの出ない疑問。今後、自分がどのように変化してしまうのかという不安。夢が遠くなる悲しみ。本当につらいと思います。

 そして、家族、ご両親の心情、大事なお子さまの身体に起きた異変を受け入れ、支えていくのは大変なことだと思います。

 介護者となるご両親もまだ仕事を抱えたなかでの介護負担は大きく、マンパワーの確保が重要になるのではないでしょうか。

 ALSは進行が進むと外出にも介助が必要になります。また、話しにくいなど構音障害が出たり、人工呼吸器装着により、言葉を発することができなくなるなど、コミュニケーションが取りにくい状況になります。そうなったときに、患者本人が孤立感を感じてしまうのは若いALS患者にとってとてもつらいことだと思います。

 ALSの進行に伴い、身体の変化に対するネガティブな感情やコミュニケーションの取りづらさを感じ、社会から距離を取ってしまうのは悲しいと思います。

今までの友人知人へ、ALSという病気を理解してもらうこと、そして様々な場面で協力してもらえる関係を築くことも若年層ならではの課題だと思います。

 次に、20代30代での発症の場合、介護保険制度が利用できないという点があります。

 介護保険制度とは、40歳を過ぎると介護保険料を支払いが始まると同時に、介護状態となったときに介護保険制度のサービスが利用できるようになるものです。

 主なサービスとして、福祉用具のレンタル、デイサービスなどの施設利用、ホームヘルパーサービスなどの人的サービスなどです。

 ALSの主な症状として、身体の筋力低下とともに、身体が動かなくなります。

 歩けなくなれば車いすや歩行器が、起き上がることができなくなったら介護用ベッドが必要になります。介護者負担軽減のためのヘルパーサービスなども重要です。そういった介護保険でのサービスは患者が40歳になるまで利用できないのです。

 40歳未満のALS患者が利用できる社会的サービスは障がい者手帳を取得した後の、障害福祉サービスのみとなるため、ALS患者本人のQOL(生活の質)の向上に課題がでてきてしまうのです。

 【40代から50代でのALS発症の場合】

 最後に、我が家のように40代、50代でのALS発症となると、働き盛り、子育て真っ只中での発症になります。

 主介護者となる配偶者は介護と育児を同時進行で行わなくてはならなくなります。

「ワンオペ育児、ワンオペ家事は大変だ」という考えが浸透し、今は家事や子育ては母親一人で行うのではなく、父親も家事育児に積極的に参加するべきという社会の風潮もあります。

 そのような中、家事育児の頼りになるべき配偶者がALSになり介護状態となってしまう。子どもの洋服を着替えさせたあとに、配偶者の洋服の着替えを介助し、子どもをお風呂に入れた後に、配偶者の入浴介助をする。

 ただでも負担の多い育児と同時に行う介護は、介護者にとって大きな負担となります。

 また、働き盛り世代でのALS発症ALSは、金銭面での不安も生じさせます。

子どもが中学生、高校生と子どもの学費が掛かる頃に、ALS発症に伴い、仕事ができなくなり大きな収入源を失う。それを補うために、配偶者は育児と介護をしながら働いて収入を得なくてななりません。それは大きな負担となってしまいます。

 子どもの学費や生活維持のためにと、ALS発症により身体が動かなくなってもできる限り仕事しなくてはならないという、患者本人にとっても大きなプレッシャー感じて、動かない身体での日常に無理をしてしまいます。

 仕事をしていれば収入があるが、反面、40歳を過ぎれば利用できる介護保険制度での利用自己負担は3割負担となります。(一般的な高齢者世帯の利用自己負担は1割)

 車いすをレンタルしても通常900円で借りられるものが2700円となるなど金銭的な負担も大きくなります。

 また、子育てと同時に行う介護のため、マンパワーの不足してしまい、介護者への身体的、精神的負担が大きくのしかかるのです。

 【まとめ】

 ALSは進行に伴って身体が徐々に動かなくなり、食べ物を食べたり飲んだりすることもできなくなります。しかし、明確な病気の原因の解明や治療薬が無い現在、患者は病院ではなく、家庭を基盤とした社会生活を送っています。

 ALS患者を支える家族負担はその患者の発症年齢や進行状況、家族構成、収入などによって大きく変わるのです。

 しかし、どのような患者に対しても患者本人が安心して過ごせる環境を作り、本人の意思を尊重した介護をすることが大切だと思います。

 そしてその中で、介護者の負担をより軽減できる方法を求めて、利用できる社会資源、社会サービス調べ、利用していくことが必要だと思います。